アーティクル

天外内トレーニング

日本でキリストの弟子となるために

宣教戦略シンクタンク「RACネットワーク」福田充男

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その2 主の教えを口ずさむ

トレーニングのエッセンス

替え歌を紹介します。「七つの子(からすなぜなくの)」の節で歌ってください。

 

天に名が 記されて
いることを喜び
神の声を聞いて
どこまでもついてく
世の人に 仕え 神の国 証しし
主の品性を宿し 仲間に愛を示す
十字架に かかられた
イエスに身をささぐ
弟子作りをする人 次々生みだす

 

この歌には簡単な振り付けもあるので、トレーニング参加者は、最初のセッションで全部覚えて、歌いながら踊ることになっています。また、他国でトレーニングする場合には、その国のほとんどの人にとって馴染み深い歌を選んで替え歌にします。

 

日本語がままならない2歳の子どもでも自然に聞き覚えて踊っているぐらいなので、誰でも覚えることができます。この歌が気に入って、朝起きたらすぐに歌うことを日課にしているご婦人もいると聞いています。

 

この歌詞には、天外内トレーニングのエッセンスが詰まっています。短い歌詞を覚えれば、トレーニング全体の内容を概観できるし、いつでも歌いながら復習することができます。

 

このように、シンプルな言葉やイメージに絶えず繰り返し注意を向けることが、このトレーニングの狙いの一つです。

 

シンプルに、そして短く

聖書のすべての戒めの中で、もっとも大切な戒めは、「心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。」(申命記6章5節)ですが、それをどのように実行するかが、次の節以降で説明されています。

 

「私がきょう、あなたに命じるこれらのことばを、あなたの心に刻みなさい。これをあなたの子どもたちによく教え込みなさい。あなたが家にすわっているときも、道を歩くときも、寝るときも、起きるときも、これを唱えなさい。

 

これをしるしとしてあなたの手に結びつけ、記章として額の上に置きなさい。これをあなたの家の門柱と門に書きしるしなさい。」(申命記6章6―9節)

 

英単語を覚えたときのことを思い出してください。単語帳やら単語カードを作って、一日に何度も繰り返して開いてみては、発音しなかったでしょうか。

 

日本語を見てすぐに英単語が思い浮かぶようになるためには、単に正しい情報だけではなく、反復練習が不可欠です。「心を尽くして神を愛する」ためにも、単語帳のような「繰り返し注意を向けるための装置」が必要です。

 

反復練習することで、次第に自然な習慣として、生活の中に定着していきます。記憶が行動様式として定着するためには、新しい認知地図に十分に注意を向けることが必要なのだそうです。

 

手に結ぶひもや門柱に書き記す言葉は、反復して注意を向けるための装置です。それらは、シンプルで、すぐに記憶を呼び起こすものです。

 

詩篇の記者は主の教えを実行する人を、次のように描写しています。「まことに、その人は主のおしえを喜びとし、昼も夜もそのおしえを口ずさむ。」(詩篇1篇2節)

 

いつも口ずさむことができるほど、シンプルで親しみ深い教えのパッケージが必要なのです。

 

シンプルなら、他の人にすぐに教えることができます。教えようと思わなくても、歌を聞き覚える人が出てくるかもしれません。子どもにでも、大切なことを短時間で伝えることができるのです。

 

伝える内容をシンプルに保つ努力を怠ると、教えの体系が大きくなり、一部の特別な人が時間をかけて教えなければ伝わらないものとなってしまいます。

 

Keep It Simple and Short (シンプルに、そして短く)が、ムーブメント継続の合言葉なのです。

 

フラクタル構造

また、そのパッケージは、「フラクタル」だと効果的です。フラクタルとは、どんな細部を見ても、全体と同じ構造が現われる図形のことです。自分自身のミニチュアがそっくりそのまま自分の中に入っているような図形で、どこを拡大してみても、全体構造と相似しています。

 

このトレーニングの場合、冒頭でご紹介した歌が、シンプルな神学を表現していますが、歌を覚えた後に教えるデボーション、アカウンタビリティーグループなどの実践、さらにはリーダー育成に至るまで、基本構造をできる限り統一しています。それは、主に従おうとしてその言葉に注意を向けるとき、状況は変わっても、同じ構造を思い出すことによってより包括的に理解できるからです。

 

少しフラクタル構造の例を挙げてみましょう。天外内トレーニングでは、神に対して、互いに対して、質問しながら答えていくという形式を採用しています。

 

質問には大きく分けて3つの領域があり、それについては次回以降で説明しますが、本当に大切ないくつかのことに注意を向けられるような設計になっています。

 

たとえば朝のデボーションでは、「今日誰に、どのように、どんな言葉で福音を伝えたらよいでしょうか?」と神様に尋ねることになっていますが、週に一度のアカウンタビリティーグループでも、数人の仲間と同じような質問を交わします。すなわち、「今週は誰に、福音を伝えましたか?」と尋ねます。

 

さらに、リーダーに対するコーチングでは、同様の質問をリーダーに聞きます。たとえば「未信者の家族が救われるために、教会として何か取り組むべきことがあるでしょうか?」。また、「あなたが指導している人が継続的に喜んで福音を伝えるようになるために、どのように助けることができますか?」などです。

 

外に向かって福音を伝えることには、意識して取り組まないと、知らないうちに「内向き」になってしまいます。

 

さて、シンプルかつフラクタルなシステムが実行したり伝達するためにすぐれているという前提のもと、次の質問をさせてください。

 

「それさえあればムーブメントが起きるのでしょうか?」

 

答えは「ノー」です。

 

勘違いしてはいけないのは、論理やシステムがいのちを生みだすのでは決してないということです。宣教の主は、イエス・キリストご自身です。

 

神が聖霊の風を送られると、教会は帆船のように風を受けて進むことができます。天外内トレーニングは、神が送ってくださる風を捕らえようと帆を揚げる試行錯誤の中で、主に教えられながら次第に形作られてきました。今も実施するたびに形が変わっていきます。

 

聖霊の風を受けて世界の弟子化に関わらせていただきたいという強い渇きを持つ人と一緒にセーリングすることが、私の願いなのです。