リーダー育成

携帯メールの牧会書簡

宣教戦略シンクタンク「RACネットワーク」福田充男

ページ5

 

5 人々に仕える(その1)

ブリザード吹き荒れる極寒の南極大陸を観測して帰ってきた永田武隊長が、「一番苦労したのは、隊員の人間関係だった」と語られたそうです。人は人間関係が良好なら、幸せを感じることができます。 隣人に対する見方が変わり、仕えあう交わりを形成することは、神との関係を回復していただいた人間に与えられるもっとも大きな祝福の1つです。

 

安全な場所を提供する

子どもの頃、同居していたおばさんの前で小さな嘘をついたことがありました。子どもの嘘なので、いとも簡単に見破られてしまったのですが、そのおばさんはこう言いました。 「坊やは正直だから、嘘つくのが下手だね。」私はしかられなかったのでホッとしたと同時に、とても恥ずかしかった。また一方、ここには自分の味方がいるんだ、と思って嬉しかったことを覚えています。

 

敏君にもそういう感じを味わう場所が必要だよね。自分の弱さや欠点を知った上で、裁いたり、悪口を言ったり、見下げたりしないで、本当の自分を受けとめてくれる友人。

 

イエス様は、私たちがどんなに罪深いかを知っておられたのに、それを承知の上で、黙って身代わりの死を選び取ってくださいました。だから、イエス様の前では、自己防衛のガードを下げて、ありのままの自分でいることができます。 これは大きな祝福です。敏君は、「お気に入りの息子」です。その無条件の愛を味わってください。

 

しかし、その祝福をイエス様と結びついている私たちだけが独り占めしてはいけません。私たちの周りには、「もう自分を守るために戦わなくてもすむ安全な場所」を求めている人々がひしめいているのですから。

 

相手の本当の姿を神の目で

子どもは、両親や養育者から肯定的な言葉と否定的な言葉の両方を聞いて育ちます。 「いい子だなあ」、「かわいいなあ」という励ましや愛情の表現とともに、「何やってんだ」とか「さっさとしなさい」という裁きや叱責の言葉のシャワーを浴びて育つのです。

 

大きくなってからでも、他の人と比べられたり、ばかにされたり、非難されたり、批判されたりするのは世の常です。ある人が新聞の言葉を調べたところ、95パーセントが否定的な言葉として分類されたそうです。

 

ところが、どんな人にも長所はあるし、頑張っている分野があるものです。それを認めてくれる人に出会うときに、私たちは「生きた心地」がします。今は、ほめ言葉の飢饉の時代です。敏君は、自分と触れあう人々を生かすことができるでしょうか。

 

天の父から「私の愛する子、私の心にかなう者だ」と声をかけられた者だけが、隣人の中にある美しい心、真実な志、優れた能力、愛すべき性格を見抜いて表現することができます。

 

おだてるのではなく、その人の本当の姿を神の目で見させていただくのです。良いものに目をとめようと心がけていれば、見えなかったものが見えてきます。あとは、愛の心で表現すればよいのです。

 

神の傑作品

長男が「トッポ」という名の中古車を買ったとき、特徴のある車だなあ、と思いました。その頃は、こんな形の車はあまり走っていないと思ったものです。 ところがしばらくすると、「あっ、あそこにも走っている、ここにも……」というように、この車が結構市場に出回っていることに気づくようになりました。

 

うちの長男が乗り始めたので、皆がわれ先にと「トッポ」に乗るようになったのでしょうか。もしそうなら、彼も「ベッカム級」の影響力があるということになります。 事実は、単に意識するようになったので目につくようになった、ということでしょう。

 

相手の良いところを探しだすのは、あまり難しくはありません。なぜなら、相手は「神の傑作品」なのだから、ほめる材料はたくさんあります。 それに、今は目を見張るような成果が出ていなくても、ぱっとしなくても、長い目でみると確実に進歩していたり、将来性があったり、取り組みの姿勢そのものが誠実だという場合もあります。

 

大切なことは、その人が過去も現在も未来も「神の傑作品」だということを意識することです。そして、気づいたことを誠意をこめて、なるべく具体的に表現するためのスキルを身に付けることです。

 

人を生かす肯定的な言葉

敏君も知っているように、世間では皮肉や悪口を言われることはあっても、評価したり励ましたりしててくれる人とはめったに出会いません。たまにほめてくれる人がいても、口先だけではない「心のこもったほめ言葉」を聞くのは稀です。

 

養い育てるような愛の言葉を聞くことができる人は幸いです。私は毎日妻と、互いの良いところを2つずつほめるという日課に取り組んでいます。妻から「あなたのそのままが大好き」とか、「いつもあなたの味方よ」とか、「あなたが頑張っていることを知ってるよ」というメッセージを受け取ると、それだけで元気が出ます。 こういう肯定的な言葉は人を生かします。

 

D.カーネギー著『人を動かす』には、次のようなエピソードがあります。授業中に逃げ出した実験用のねずみを、先生は目の不自由なスティーヴィー・モリスに頼んで探しだしてもらいました。 この少年が人並外れた鋭敏な耳を持っていることを知っていたからです。

 

自分の能力を認められた実にそのときに、新しい人生が始まった、とスティーヴィーは述懐しています。それ以来、彼は天与の聴力を生かして、ついには「スティーヴィー・ワンダー」という名の世界的な歌手になっていきました。